2019/05/30

ヒューズを抜いてくれ【ティク・ナット・ハンの詩】




「ヒューズを抜いてくれ」 ティク・ナット・ハン
 
もしぼくが爆弾なら
いましも爆発しようとするところ
もしぼくが いま君のいのちを
脅かすなら
ぼくの取り扱いに気をつけるべき
君はぼくから逃げられると考える
でも どうやって?
ぼくはここ 君のど真ん中にいる
(人生からぼくだけを取り除くのは不可能)
おまけにぼくは
いつ爆発するかわからない
必要なのは君の気づかい
必要なのは君の時間
ぼくは君にかかっている
君は約束したのだから(ぼくは聞いていた)
愛することと 気づかうことを
 
ぼくの世話をするときに
必要なのは大きな忍耐
変わらぬ平静さ
ぼくは知っている
誰の中にもヒューズを抜くべき爆弾がある
だから 互いに助け合うほかないだろう?
 
どうかぼくの言葉を聞いてほしい
だれも耳を貸してくれなかった
だれもわからなかった この苦しみを
ぼくを愛すると言った人たちさえも
この心の痛みが
ぼくを絞めつける
爆弾の成分はTNT火薬
ぼくの言葉を聞こうとする者は
ひとりもいなかった
だからこそ 君に聞いてほしい
でも君は 逃げたがっているのだろうか
自分の身を守るため 走り去ろうとしているが
それで得られる安全なんて
どこにもありはしない
 
ぼくが勝手に作った爆弾ではなく
それは君だ
社会だ
家族だ
学校だ
伝統だ
だから ぼくを責めないで
そばに来て 助けてほしい
でないと 爆発してしまう
これは援助要請なのだ
ぼくも君をきっと助ける
いつかその立場になったなら
 
 
ティク・ナット・ハン詩集
「私を本当の名前で呼んでください」より
島田啓介 訳、野草社
 
 
 
ーーーーー
 
約束して下さい。
今日、約束して下さい。
太陽が中天にある時。
 
たとえ、 彼らが山ほどの憎悪と暴力をもってあなたを打ち据えようと。
 
兄弟よ、覚えていてください、人間が敵ではないことを。
 
ティク・ナット・ハン (訳シスターチャイ・ツイッターより)
 
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ティク・ナット・ハン師の弟子たちによるプラムビレッジの活動には、刑務所でマインドフルネス瞑想実践のサポートがあります。



ティク・ナット・ハン師は、歩く瞑想で怒りや困難な問題と向き合っていました。

怒りを理解するには「怒り〜心の炎の静め方〜」(サンガ出版)翻訳本もあります。





写真は2016年元日バンコクのエラワン廟にて
(2015年に爆破事件があった寺院)